人生訓を学んだ日。

僕は昨日
素敵なおじいちゃんに
遭遇した。

僕は昨日の昼間
コンビニで
何気なく雑誌を物色してる振りをしていた。

店員さんに
「コイツいつもタバコだけ買ってんな」
と思われる事を避ける為のブラフ行為だった。

入り口から遠回りなのに
雑誌コーナーを通過してから
レジでタバコの番号を言う。

これは僕のコンビニでの様式美だった。

そこに
「ウィーン」
とおじいちゃんが入ってきた。

齢86才くらい。

「梅干しかな?」

僕は
高齢化社会からバッシングを浴びるような
偏見で彼を見ていた。

すると
おじいちゃんは何故か
食品コーナーではなく、
僕の真隣にきた。

漫才コンビ。

店外のガラス窓からは
僕と彼が
そう見えるかも。

そう危惧した刹那、
僕は自身の一重まぶたが
ぱっちり二重に変形するほど驚いた。

おじいちゃんは
風俗情報誌を凝視していたのだ。

匠。

その目は熟練された職人の目だった。

そして風俗情報誌(以下、上野)を
手に取ると
まさかのルール違反。

ビビビビビビビ!

と、上野に貼ってある
未成年閲覧防止のブルーのシールを剥がし出した。

未成年。

僕は戦前生まれの彼の突飛な行動をそう捉えた。

そして、あるページで
彼の手は止まった。

「SMプレイ専門店」

おじいちゃんは
おMちゃんだった。

そういえば

さっき剥がしたシールも
彼の口に貼られている。

僕はなんだか嬉しくなった。

「年なんて関係ない。
Mって、無限じゃないか」

コンビニの外にでると

ピーカン太陽。
群青のグラデーションの空に
飛行機雲が気持ちよく白線を伸ばしていた。

きっとそれを辿れば

上野駅に着く。

僕は、そう確信していた。





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