電車内のカップルの会話。
僕らは電車に乗っていた。
ガタン、ゴトン・・。
ふたつのトイレマークのように並んだ僕らは
座席前の場所に立っていた。
目の前の座席には
イマドキ風なカップル。
女の子めっちゃ可愛い。
カップルの男が女の子に言った。
「カップ麺の3分てさー、なかなか待てないよね。
ギャハハハ」
「だよねーハハハ」
女の子も笑った。
僕は怒りに似た感情を覚えた。
なんだ、この会話。
どこがおもしろいんだ?
なんでこんなヤツが可愛い女の子といるんだ!?
なんでこんなヤツが座席に座っているんだ!?
僕は座れずに立っていたので怒りも倍増した。
「カップ麺の3分てさー、なかなか待てないよね。
ギャハハハ」
「・・・・・。」
僕の脳裏に先ほどのカップル男の言葉が疾走した。
降車した僕は友人に
カップルの会話について聞いてみた。
「お前ならなんて言う?」
「・・・・・。」
友人は真剣に悩んでくれた。
彼も悔しかったのだろう。
彼の右手を顎に当て熟考する姿は
哲学者を彷彿させた。
眉間の皺が濃くなる。
5分間の沈黙の後、
友人は聖書を開く牧師のように
優しく唇を開いた。
「・・・
カップ麺にお湯を注いで3日忘れてて
怖くてフタを開けれなくなった。
5日目に勇気を出してフタを開けようと思ったら
カップ麺ごと無くなってた。
もうどれだけ麺が大きくなってるかと思うと
帰宅時、麺が溢れ出てきそうでドアを開けるのが怖い。
だから、
今日一緒に
俺のアパートに来てくれないか?」
「100点。お前のほうがモテるよ。」
僕はそう返答したあと、
友人の髪を見た。
友人は時代遅れなソバージュをかけ、
色を明るいブラウンに染めていた。
まるで麺。
なぜ突然、先ほどのカップルの男がカップ麺の話を始めたかが理解できた僕は
友人に優しく微笑んだ。
カップルVSカップ麺
これでもか、というくらいのボコられ具合。
友人は電車内で殴打されたのだ。
カップルの
「たわいもない仲良し会話の餌」にされたのだ。
見た目だけで。
赤の他人なのに。
それもまた
僕の心底を痛めた。
季節は冬。
せっかくの晴れ間なのに
僕の頬を冷たい涙が
ジグザグに
ラーメンの麺のようになぞった。
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