無職中年と中学生の闘い。

僕はコンビニで
漫画雑誌を眺めていた。

購入するお金は持っていない。

なので、表紙だけを目で撫で

流行りの漫画タイトル、絵柄等
「まさに表面」という限られた情報だけで
漫画業界の流れを把握しようとしていた。

「このコンビニでは母に渡された千円で時々夕飯を購入するので許してね」
と思っていた。

すると、横から
怪しい陰。

僕に
「いつものヤバいやつ来てんじゃん」
的な
認識をしてる店員さんかと思ったら

立ち読みをしている

ひとりのヤンキー中学生だった。

身長150センチ位のこの子は

ヤンキー過ぎた。

立ち読み、という行為だけで
僕の表紙眺めを軽く凌駕しているのに

彼は読んだ雑誌をバンバン敢えて逆さにして
本棚ラックに戻していた。

自由。

これは新しいしおりだ

僕はそう思い感嘆の吐息を漏らした。

この子は自分の読んだ雑誌を重複して手に取らないように
逆さにしているのだ。

でも、そんなワケ無いのは毛頭分かっていた。

彼がコンビニを、世間を、大人が苦労して作った社会を、
りんご飴のように舐めてるのは
手に取るように分かっていた。

軽く疲れたのだろう。

その子はついに
通路に座りだした。

「坊や、そいつぁは、やり過ぎだぜ?」

僕はそう言いかけたが
学ランに付いている
チェーンの量を見て思い留まった。

コイツ、肝据わってそう。

僕の長年のイジメられっ子経験、
エクスペリエンスがそう直感した。

だが、

僕はもう社会人だ。

僕は
この子の未来の為、 地域の為、
そしてこの 水滴痕のような居場所、
「コンビニ」の為、
この中学生を注意しなければいけない。

僕は

「なぁ、そんなとこに座って読んだら
 迷惑だろ?」

と言った。

そしたらヤンキー中学生は
まさかの

「あ、・・・すいません。僕、O型なもので。」

とまだ声変わりのしてない声で
すぐに立ち上がった。

「O型ってなんだ?」

僕は、これは舐められてるのか
単におバカなのか、
分からなかった。

でもきっと、後者。

僕は胸を撫で下ろした。

そして、きちんと
雑誌を元通りに戻して
「ごめんなさい」と言ってきた。

なんだ、いい子じゃないか。

僕は少し嬉しくなった。

ほっかほかの肉マンを購入して、
「ほら、熱いぞ?」
と渡してやりたかった。

でもそれは、金銭面で諦めた。

僕は、はニコニコしながら
そのヤンキー中学生が小走りに
店を出て行くのを見送った。

かわいい子だな。

やはり、
きちんと大人が注意をするべきなんだな。

いい事したな。

俺って最高だな。

これで落ち着いて表紙の舐め回しができるな。

僕は店の迷惑も厭わず、深くそう思った。

店のガラス越しに小走りのヤンキー中学生が映った。

その子の親の車なんだろう。

ヤンキー中学生は

黒塗りのベンツの後部座席に乗り込んだ。

はい、スタンドついてた。

僕は外から見えないように
座って雑誌を手に取った。

書かれた細かい文字は勿論、
でかでかと印刷された雑誌のタイトルさえ
頭に入って来なかった。

でも防衛本能で

実話ナックルズは手に取らなかった。

季節は冬。

「言いつけるなよ」と呟く僕の声は
店内の暖房によって掻き消された。

レジ横では商品のおでんがぐつぐつと煮えていて、
それがなんとなく怒りの表現に感じられた僕は、

「落ち着いて」
と薄い煙を吐き出すおでんに

優しい表情で語りかけた。


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ギャグ漫画を描いてます。
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