強引に消防士。

僕はつい先日、
「俺の小学生からの夢は消防士なんだ」
と、
おっぱいの大きな女の子に嘘をついた。

理由は

「夢を持ってる男性って素敵」
という女の子の発言と

卓上のライターが偶然視界に入っただけだ。

2秒で決めた夢だった。

「消防士なんてすごいね!」

と女の子は瞳がランラン。
眼球が潤みダンスホールのミラーボールのよう。

僕は「やべーな」

と内心思いながら

「英語では、ファイア・ファイター」

と精一杯の消防士についての知識を披露した。

「さすが!」

女の子はおっぱいは大、
脳は小、
だったので満足してくれた。

僕は自分で何が消防士だ、と。

自身の性欲も消せないじゃないか、と。

赤く染まるのはこち亀(こちらの亀)じゃないか、と
自分が情けなくなった。

嘘の夢を語り、将来の目標を偽ってまで
そんなにおっぱいが揉みたいかと。

揉みたいよ、と。

テーブルのグラスは氷が溶け涙だらけ。
紙製のコースターを

柔らかくしていた。

胸はもっと、だ。

僕は「柔らかい」という言葉に敏感になっていた。

窓外のネオンたちが七色に濁り、
パチンコへの連想からか
「フィーバーまでもうちょい」と
僕の煩悩をくすぐった。

徒歩での帰り道、消防車が「ウー」と言いながら
僕らの前を横切った。

その子は僕を見て

「チャンスよ!」
と僕の肩を叩いた。

僕は「この子本当にバカなんだな」
と思いながらも
相手のバストに負け
右手に持っていたエビアンのペットボトルを見せながら
「行ってくる!」
と消防車を追いかけた。

後方からの

「ファイア・ファイター、ファイトー!」

のアホな声援に、
僕の恋の炎は消されかけたが、

「大事なのは外見とおちち」
をスローガンに
無心で疾走した。

僕は

1分後には消防車を見失い、

エビアンも飲みきっていた。

ふと空を見上げると満天の星空。

闇の中で八重歯を出す星たちが
なんだか今日の僕に賛同の拍手をしてくれているようで 照れた。

でも北斗七星も輝いていて
ひしゃくの形なのが
「まだ水を掛けろと言うか」と何かムカついた。

女の子からの
「偶然にも今日は火曜日!」

のラインはさすがに既読スルーしたが

火遊びは出来なかったね、
という脳裏によぎる自分の言葉に
蓋をするように

枕に顔を沈めて

僕は深い眠りに付いた。

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